荒廃した世界の後日談 題目『終わりの始まり』
―やぁ、迷える子羊
僕の名前はスクリプター。あぁ、君は名乗らなくてもいい、僕には全て分かっている。
突然で驚いたかな?聞きたいこともあるかもしれない。ただ、僕から君に言えることは一つ。偶然か、それとも必然か。君はこの世界、「荒廃した世界」に迷い込んでしまったのさ。まぁ、他の世界に来てしまうことなんて滅多にない。どうだい。ここは一つ、帰るまでの間に僕の話を聞いていってくれよ。
じゃあ、最初の話をしよう。そうだな…題目は『終わりの始まり』、役者はこの惑星。
この惑星の名はアルカヌム。ミコーとゲイル、2つの大陸により成り立つ小惑星だ。この世界にもかつては君たちのような人間が沢山いたし、人ならざる人、亜人と呼ばれる存在も数多く暮らしていたんだ。君たちには見慣れないかもしれないけれど、魔法なんかも存在している世界でね、とても豊かで美しい惑星だった。
でも、人が必ず死ぬように、その豊かさもいつかは消えてしまうもの。発端は150年にも及ぶ高度技術成長期だった。人間はあらゆる生物に劣る。亜人や動物は勿論、いつしか機械の働きにさえ劣った。ただ人間が唯一他の生物に勝る力、それは考えること。人間はその劣りを補うため、考え、利便性を求めあらゆる文明の利器を造り出してきた。
けれども、出過ぎた欲はやがてその身をも滅ぼすもの。工場の排気ガスや汚染水の排出、過度な土地開発による環境破壊が進み、惑星アルカヌムはやがて荒廃の一途を辿った。人々は飢えや疫病に苦しみ、不足した食料や水を求め合い、やがて各地で戦争や内戦や暴動が起こったんだ。大量の火器兵器や核の使用により、更に環境は悪化していった。
それから約10年後、漸く戦争は終わった。人類滅亡、という最悪の形でね。最後には、終焉しか残らなかったんだ。戦争は、世界が終わってもなお大きな傷痕を残した。美しかった街は、ただの瓦礫の山と化した。至るところに人類の進歩の残骸が積み重なり、かつて恵みと呼ばれていた雨は、酸性の凶刃となって降り注いだ。薬品と硝煙と血に汚れた大地と排水混じりの汚濁した水。生命の欠片も残っていない―ように思えた。
そう、そんな世界にも、微かな生命の灯火があったんだ。
異形となった者達。この荒廃を生き抜く力を持った者達。
そう、これは後日談。終わりから紡がれし物語。
「荒廃した世界の後日談」
君には、僕の知り得る後日談の全てを語ろう。