ゴミ山

しがない一次創作者の設定の吐き溜め。微エログロ含みます。特殊性別、奇形など。

語り継がれた英雄譚 14話

―国立狩人育成学校。読んで字の通り、狩人になる為の知識を学ぶ教育機関である。10を超えていれば誰でも入学することができ、国の支援の元、8年間の就学の末に最終的には卒業と同時に狩人の身分証明徽章を与えられ、初めて狩人を名乗ることを許される。
入学して3年はオーウォーランク、次に3年間はプルスランク、最後はアウェスランク、と入学してからの経験、知識、履修内容によってこのランクに分けられ、その中でまた1期生、2期生3期生と区別される。一期生につき3クラスに分けられ、座学成績により上からA、B、C、となる。
プルスランクからは「専攻」と呼ばれるコースを選択する。刀剣専攻、打撃専攻、射出専攻、長柄専攻、武術専攻、魔法専攻…と自分の能力に最も適した力を身につけるのだ。


「サンザシは、魔女の木と呼ばれる。その魔力は、蜂や蝶や小鳥、妖精を惹きつけるんだ。だから道を知る魔法、妖精の幻覚を見破る魔法など、妖精を呼び出し、その力を借りる為によく使われる」
初夏のぎらぎらと突き刺すような日差しが教室内に注ぐ。開け放たれた窓から吹き込む風は、とうに涼しさを乗せたものではなく、熱を纏った生暖かい空気だ。窓際二番目、後ろから二つめの席。重さを感じさせるような熱い風に、僅かに揺れる青髪と耳飾りがあった。机の上に広がる教科書とノート、ただし紙の上には放射状に青い髪の毛が散乱し広がっている。
「次にこれはヘンルーダ。低木のハーブで、コカトリスバジリスクなどの石化魔法を解除し防ぐ力が―おい、レミィ」
教鞭を取っていた大人が、板書をしている生徒達を見渡し不意に動きを止める。普段から「猛禽類のようで怖い」と称される細く釣り上がった目は更に険しく、眉間にしわが寄っていた。その視線の先にいるのは、青い髪の少女。
「…おい、レミィ!起きろ!」
食後の、少し微睡みのある穏やかで緩やかな空気を、びりびりと圧力のある重低音が打つ。微睡みの波の中船を漕いでいた数人の生徒が、雷に怯える子どものように反射で身体を跳ねさせる。レミィも例外ではなく、「はっ!?ひゃい!?」…と情けない、寝惚け声を上げて、机に突っ伏していた頭を一気に上げた。
「…おい、レミィ。俺の薬学の授業で寝るとはいい度胸だな。」
細い、脅迫するような目で睨まれ、レミィはまさに蛇に睨まれた蛙だった。
「へっ…あっ…すいません…」硬直し視線を逸らすこともできなかった。何か冷たいものが背筋を伝うのを感じながら、乾いた唇からか細い謝罪の声を零した。
「前の授業の時も寝やがって!お前の評定下げてやるからな!」
「そっ…そんな…!ただでさえテストはいい点数取れないのに…!」
「自業自得だ!」
すっかり気落ちし、外の暑さにふさわしくないほど顔を青ざめたレミィと、そんな二人のやり取りを見て悪意の篭らない、軽い笑い声が教室に響く。
「全く…。さて次は…バーチについて解説する」そういった途端、空気が震えた。物々しい、陰気な風がじっとりと皮膚を這いずり、湿った綿のように重い雲が太陽を覆った。もう獅子の月だというのに、吹き込んでくる風はじんわり生暖かく、それでいて氷のような冷たい悪意を運ぶ。
誰もが、不安にざわめいた。ただの杞憂であってくれと願った。しかし現実は、残酷にも告げられた。
「学校領域内に、不特定多数の魔物の出現を確認した」