ゴミ山

しがない一次創作者の設定の吐き溜め。微エログロ含みます。特殊性別、奇形など。

語り継がれた英雄譚 4話

「………は」

ばきり、骨の砕ける音がした。次の瞬間、今まさにレミィの頭を握り潰さんとした腕が鈍い音を立てて地に叩きつけられた。魔王は落ちた腕に目をやり、次にレミィを凝視した。そして目を細め、憎々しげに「…あぁ、お前か」と呟いた。静かに、それでいて苦虫を噛み潰したような不快そうな表情でレミィに話しかけた。

「…久しぶりだな。100年ぶりに見る、最も忌むべき顔だ。今回は随分と、虚弱そうな見た目になったものだ」

その声に反応するように、俯いていた顔を上げた。その時アトリアは見た。青玉のように、目も覚めるような鮮やかな青色の瞳が、激しい憎悪を溶かし込んだような真赤な、赤く血走った瞳に変わっていることを。

レミィは体を捻って右半身を引くと、そこから力任せに拳を突き出した。突き出された拳が魔王の掌に収まると、水面を打ったような高い音が響いてそこから大気が震えた。そのまま数秒膠着状態が続き、やがて両者は後ろに飛び退いた。少女は獣のような前屈姿勢を取ると、すぐさま大地を蹴って1直線に魔王の元へ走り出した。ナイフを振りかざすように、鋭い蹴りが空間を裂いた。避けられて、また攻撃を繰り返して、避ける。

目の前で繰り広げられている、人を域を超えた戦いに、誰もが息を呑んだ。だが終わりは、存外簡単に訪れた。

「!」

天は少女を見限った。土砂降りの雨でぬかるんだ地面で足を滑らせたのだ。その一瞬の隙を見逃す筈がなかった。

「ッレミィ!!」

頼りないほどに小さく細い身体を、鋭い爪の生えた腕が貫いた。レイの悲痛な叫び声だけが、尾を引いて響いた。


語り継がれた英雄譚 3話

冷たい風が頬を撫ぜる。胸を過ぎる不安に急かされるように、レミィとレイは少し駆け足で村の中を走り抜けた。誰も居ないのだろうか、子どもたちの笑い声も、女たちの噂話も、何も。鳥の鳴き声さえ聞こえない。その異様な状況に言い知れぬ恐怖を覚え、真っ先に2人が目指したのは自分たちの帰るべき家だった。穏やかで幸せな、日常の象徴であり、あそこに帰れば、また日常が訪れるものだと漠然と信じていた。

白壁の家が並ぶ通りを抜けて、突き当たりの角を右に曲がる。その先で2人が見たものは

本来あるはずのない角を生やした男

男を取り囲む大人たち

そして血溜まりの中の

「…お父さん…?お母、さん……?」

ほんの数時間前まで、生きていたはずの、肉塊と化した父と母の姿だった。

「!レミィちゃん!?レイ君!?」

杖を構え、男と対峙していた女―レイの師アトリア・ハーバードは驚いたような、焦ったような声で2人に呼び掛けた。だが、返事が返ってくることはなかった。

レミィは動かなくなった両親を見つめたまま呆然と座り込み、レイは初めて対峙する凶悪過ぎる存在、『魔王』への恐怖から目を逸らすこともできず震えたまま固まってしまった。

空一面に広がった暗雲はいよいよその暗さを増し、やがて一つ、また一つと小さな雫が落ちてきて、涙雨が頬を伝った。

「おとうさん、おかあさん」

蚊の鳴くような呟きだけが、静かに雨音に溶けていった。


降り出した雨はいよいよ本降りになって、雨粒が激しく打ち付ける。濡れぼそった髪から雨が滴る中、やがて少女はゆっくりと立ち上がった。そしておぼつかない足取りで、一歩ずつ異形の男に近付いていった。俯いたままで表情は見えないが、どことなくこの雨のような、冷たく刺々しい雰囲気をまとっていた。誰も動けなかった。なぜなら、魔王より、背丈の半分ほどしかない少女の方が彼らにとって恐ろしく感じられたからだった。

そして少女は魔王に対峙した。

「俺が、憎いか」魔王はそう尋ねた。だが返事が返ってくることはなく、ただレミィは俯いていた。

「心配せずとも、お前もすぐ両親の所へ送ってやる」

爪の長い、大きな手がレミィの頭を鷲掴みにした。爪が皮膚に食い込み血が伝い、小さな頭はみしり、と音を立てた気がした。


ばきっ


骨の砕けた音が、辺りに響き渡った。


メビウス

メビウス

〈世界観〉

本来は神々が創った世界が存在していたが、かつて消はその世界ごと全て消滅させてしまった。世界が消え、ぽっかりと空いたその虚無、「世界の狭間」に消が創り出した世界が存在している。基本的にはひたすら一面に空と草原が広がるだけの世界だが、「創造主」である消の意思を反映させるのでどうとでも変えることができる。

消はあらゆる世界を移動し、その先で「孤独」になってしまった人々を自分の世界の住人にし、白い壁、白い屋根の大きな家に全員で住んでいる。その為住人たちの元の世界の文化を取り入れるので現代日本のようにスマホやパソコンが存在すれば中世の文化が存在し、魔術や錬金術も存在する。つまりなんでもあり。

「世界」という枠ではなく狭間に存在するので、任意の場所かどうかは別としてだが他の世界と繋がりやすい。


<大罪を犯した女神の話>

かつて「人間界」という世界が出来たばかりの頃、まだ闇や光の境目も曖昧で人間界、天界、魔界はとても密接なものだった。つまり人間にとって、天使や神、悪魔は今よりずっと、近しい存在だったのである。神々や天使が人間界に降りその世界の構成を進める中、1人の女神が人間界に降り立った。その者の名はクロト、運命の3女神モイライの1人で、紡ぎ手と呼ばれる存在だった。

地上に降り立ったクロトは、1人の羊飼いの青年に出会う。誰に対しても分け隔てなく接し、快活で優しいその青年だった。クロトはこの青年と地上に降りている間、会話を楽しんだ。そして天界に帰らなければいけなくなった時、2人は「また2人で話をしよう」と約束を交した。約束通りクロトは地上に降りる度に青年に会いに行き、話をしていた。初めは地上に行く必要がある時だけであったがやがて頻度が増え、やがて2人は恋仲となった。しかしクロトは知る、自らの紡ぎ出した運命の糸が、青年を殺してしまうことを。クロトは思い悩み、そして大罪を犯す。既に紡がれた運命を勝手に改ざんしたのだ。無論他の神々に知られ、罰せられることになった。そしてもう、2度と青年に会えないことも。クロトは天界から逃げ出し堕天した。ただ、青年に会いに行った時にはもう遅かった。改ざんされた運命は修正され、青年は死んでしまっていた。

クロトは深く悲しんだ。そして一つの呪いを自らと青年に掛けた。赤い糸の呪いという呪いだ。赤い糸の呪いに掛かった2人は、何度転生を繰り返しても、糸の力で必ず出会う事ができる。ただその代償として、望んだ幸せは絶対に手に入れることが出来なくなる。クロトはそれでも青年と共にありたいと願い、自らの魂も人間界の輪廻の中に還元し、人間に生まれ変わった。彼らは気が遠くなるような時の中、何度も出会い、そして最後にはこう言うのだ。

「次は、絶対に幸せにしてみせる」


やがて年月が経ち、また2人は出会う。今度は消という名とレクイエムという名で。


<消>

消の身体には二つの魂が宿っている。それは「消」という個人の魂と、かつての女神「クロト」の魂だ。クロトの魂にはまだ運命の糸を紡ぐ力が残っている。だから消も同じように運命を改ざんし、簡単に世界を創ったり自分の意思を反映させることが出来る。

語り継がれた英雄譚 2話

市場での買い物を終えた二人は、あたりに大人たちがいないことを確認すると、足早に村はずれの森へと向かった。

森の中に入ると、やはり人気は感じられない。村の賑やかさとは対称的に、とても静かである。時折聞こえるのは鳥のさえずりや、木々のざわめきくらいのものだ。

「そういえば、お前は村はずれの森に何の用があったんだ?」

レイはふと思い出したように、レミィに尋ねた。

「今日、お母さんの誕生日なんだ。だから、花をあげようと思って。ほら、森の中に生えてるでしょ、あの真っ赤な花」

お母さんは赤が好きだから、と喜ぶ母の姿を想像してか、口元が緩んでいる。レイはようやく合点がいった、というように「そうか」とだけ返した。森に入って数分、陰鬱とした森の中で、真っ赤な花はすぐに見つかった。花を数本手折ると、レミィは満足そうに口角を上げた。するとレイが「…それ、ちょっと貸してみろ」と声を掛けた。不思議に思いながらも、花の束をレイに預ける。「Grass Manipulare」と唱えると、手折られた花からみるみるうちに茎が伸び始め、やがてそれは花の束に巻き付いていき、最後に小さな蝶結びとなって止まった。

「えっ…なにそれ、すごい!どうやったの?ねぇねぇ!」

「魔法だ。最近教えて貰ったやつだけど…ちゃんと上手くできてよかった」

レイは、未知の事柄を知ることに対して貧欲であった。その知識欲の矛先が向かったのが魔法だったのである。世界を形作る自然の摂理や理、公式…それらを知り、己の知識として蓄え、自らの手で『奇跡』を起こすことが楽しくて仕方がないようだった。また、レイは聡明な子どもだった。生まれつき魔法の才能があるようで、その才能を早くも見抜いた師によって、本格的に弟子として魔法を教えて貰っていたのである。

「そのまま持って帰るより、まとめた方がいいだろう。魔法の練習もしたかったからな」

「うん、ありがとう!」

そう言うとレミィは、まるで太陽のように笑った。


二人が森を出ると、入る前の晴れた空がまるで嘘のように灰色に覆われていた。雲は厚く、低い空で風が唸る。村の方も、もう昼だというのにとても静かだ。なんとなく、ではあったが『何かがあった』とレミィとレイは感じ取った。心中を一縷の不安が頬を過ぎる。悪い予感がした。

「雨が、降りそうだな」

ぽつりと、レイは呟いた。

語り継がれた英雄譚 1話

  クレの村は、エルドラド国南東部に位置し、白い石レンガと赤い屋根の家が立ち並ぶ小さな村だ。周りを〈豊かなる緑の平原〉に囲まれ、春には小さな色とりどりの花が草原を彩り、夏には青々と茂る草木の緑が輝く。秋には小麦畑の黄金色の海が風になびき、冬には広大な、一面に白銀のキャンバスが広がる。

  朝、日が昇り始めると人々は皆起き出し、どこからともなく朝食の焼いたパンや、珈琲の芳ばしい香りが漂ってくる。朝食を終えると、男たちは畑や、牧場へ働きに出かけ、女たちは井戸に水を汲みに行っては明日の天気とか、夫の愚痴とか、村の噂話に花を咲かせている。アウルム曜日で学校が休みの子供たちは、手早く食事を終え、我先にと遊びに出かけて行く。

  少女レミィ・アレスは、そんな日常の中でおおらかに、のびのびと成長してきた。体を動かして遊ぶのが好きで、少年たちに混ざって川で魚を獲り、木登りをし、草原を駆け回っていた。直向きで明るく、快活な子供であった。

  レミィはいつものように朝食を済ませ、「いってきます」と告げると足早に家を出た。いつもと違うのは、向かう場所がいつも少年たちと遊ぶ場所ではなく、村はずれの森だったことだ。村の大人たちは、村はずれの森には魔物が出るから近づいてはいけないよ、と子供に言い聞かせている。だが好奇心には勝てず、子供らは大人たちの目を盗んで森へ遊びにいくこともしばしばであった。何度も森へ入ったレミィは、小さく力の弱い魔物しか出ないことを知っていた。森を目指し、通りを左へ曲がると、前から1人の少年が歩いてきた。同じ年齢の少年に比べるとすらりと背が高く、整った顔立ちはどことなく知的さを感じさせる。「レイ!」とレミィが呼びかけ近づくと、少年──レイ・カーティスも気づいていたようで、「おう」とだけ返し、レミィに尋ねた。

「こんなに朝早くから、どこへ行くんだ?いつも遊んでる場所は逆方向だろ」

「あのね、村はずれの森へ行こうと思って」

レイはまたか、とでも言うように顔をしかめた。

「あそこには入るなと、言われているだろう。大人たちにまた怒られるぞ」

「大丈夫だよ、あそこには弱い魔物しかいないから。それにもし襲われても、おれがやっつけてやる!」

得意げに拳を握るレミィを見て、レイは深くため息をついた。そして、相変わらず顔はしかめたまま、レミィに話しかけた。

「どうせ行くなと言っても行くんだろう。不安だから、俺もついていく。だから先に俺の用事に付き合え。…母さんから、市場で卵を買って来るように言われているんだ」

少女はわかった、と笑顔で返事をした。小さな影が2つ、並んで市場へと向かっていった。

荒廃した世界の後日談

【荒廃した世界の後日談】

〈世界観〉

小惑星「アルカヌム」を舞台とした話。主に大きな大陸「ミコー」と小さな大陸「ゲイル」によって成り立っている。

科学技術の進歩が凄まじく、ここ150年ほどで大きな科学成長を遂げたが、魔法という存在は一般に認知されている。人口の約6割がヒトで、残りの4割は亜人種である。仲は良好で、互いの能力を認めあっており共生している。

しかし、排気ガスや汚染水の排出、過度な土地開発による環境破壊が進み、惑星「アルカヌム」はやがて荒廃の一途を辿った。人々は飢えや疫病に苦しみ、不足した食料や水を求め合い、やがて各地で戦争や内戦や暴動が起こった。大量の火器兵器の使用により、更に環境は悪化していった。

それから約10年後、戦争は終わった。

人類滅亡、という最悪の形で世界の幕を下ろした。最後には、終焉しか残らなかった。

戦争は、世界が終わってもなお大きな傷痕を残した。美しかった街は、ただの瓦礫の山と化した。至るところに人類の進歩の残骸が積み重なる。かつて恵みと呼ばれていた雨は、酸性の凶刃となって降り注ぐ。薬品と硝煙と血に汚れた不毛の大地。排水混じりの汚濁した水。


そんな世界に、微かな生命の灯火があった。

異形となった者達。

この荒廃を生き抜く力を持った者達。


これは、荒廃した世界の後日談。


<地理>

ミコー:大きな大陸。人口は全世界の約7割。主にヒトが多く住んでいる。

カルディア:ミコーの最重要都市。国家面積はそう大きくはないが、人口密度がとても高く、最も発展した国と言える。

ウィリディス:ミコーの重要都市の1つ。国家面積が広く、バイオ技術と農業の効率化による大規模農業を行っている。そのためミコーの中で最も重要な食糧生産国と言える。

パルウァエ:ミコーの重要都市の1つ。とても小さい国だが、作業の殆どが機械化されるなか手作業で物作りをする職人達を保護しており、家具であったり、布であったり、絵など多岐に渡って最高級の物品を制作し売っている。

コンコルディア:ミコーの重要都市の1つ。その人口の殆どを亜人種が占め、魔法技術を守り、伝えている。魔法と科学、ヒトと亜人種の架け橋となる国。


ゲイル:ゲイルはその大陸自体を国としている。1年中暖かいが、たびたび強風が吹き、被害を及ぼす。その分、生態系はミコーとはまた異なるものとなっている。亜人種が多く住んでおり、ミコー程土地開発を行っている訳ではない。むしろ環境にあまり手を加えない、という意志を持っている。

インペリウム:ゲイルの首都。


<経済・政治>

急激な経済成長の影響で、貧困層と裕福層の差が開いてしまった。治安が良いと言えるのは裕福層の住宅地のみで、貧困層、中流層では窃盗や殺人なども起こっており治安は決して良いとは言えない。ただ、裕福層間でも賄賂の横行や違法オークションなど、警察沙汰になることも多かった。

また、ミコーは政治形態を民主主義とし、ゲイルは君主主義で国王を主権者として置いている。


<環境>

ゲイルよりミコーの方が環境破壊が酷い。ただ、ゲイルもミコーから排出された排気ガスや汚染水が海流や風に乗ったため環境破壊が進んでいる。しかし、僅かに生物がまだ生存できる環境が残っている。それがゲイル国民がネムス・マーテルと呼ぶ森である。

工場などから排出されるガスのせいで、惑星を覆っていた層が壊れてしまい、恒星「カリブンクルス」から発せられる有害磁波がそのままアルカヌムに降り注ぐだめ、生物は基本的に日が登る間は外で行動できなくなってしまった。


<人種>

ヒト:アルカヌムの人口の約6割を占める種族。個人の能力は亜人種に劣る面が多いが、変わりに物を作り出し、利便性を追求する能力に長けている。魔法を使える者は少ない。

亜人種:ヒト型で、人ならざるもの全般を指して言う言葉。大きく分けると下記の5種である。

獣人:獣の性質を持ち合わせた亜人種

鳥人:鳥の翼を持ち合わせた亜人種

魚人:魚の性質を持ち合わせた亜人種。形によって人魚と呼ばれる。

虫人:虫の性質を持ち合わせた亜人種

爬虫人:爬虫類並びに両生類の性質を持ち合わせた亜人種

これはあくまで一例であり、上の括りに入らない亜人種も存在する。

ノウム:排気ガスや兵器の影響を受け奇形として生まれた、もしくは荒廃する世界の環境に適応するため短期間で急激な進化を遂げて生まれてきた者の総称。ヒトや亜人種に限らず、動物や植物に対してもこの呼び方をする。


<宗教>

ヒトは無宗教者が多い。亜人種は、種族や住む地域などによりそれぞれの神を掲げ崇拝していることが多い。